セイの周りには

セイに振り回されてる
気の毒なくらいお人好しな
奇特なヒトがたくさんいて。


「あんな暴君ッに
従う必要なんて
ありませんからッ!

セイの為にも

嫌なら嫌、って
迷惑だ、って
ハッキリ言っちゃって
やってくださいッ。

私からも、ちゃんとセイに
言い聞かせますからッ」


あのバカは
他人の好意に甘えるのが
当たり前みたいになっていて

「セイって
自分の図々しさに
鈍感なトコロがあるからッ」


「……」

「ホンットに
ごめんなさい…ッ!!!」


「……」

いくらアタマを下げても
足りないとは思ったけれど

それでも下げずには
居られない。


「…それ、セイの口から
聴きたかったよな」


「え?」

「……」


顔を上げると

パソコンに向かうテルさんの
口の端が上がっていた。


「そうだ。トーコちゃんって

さっき
自分のじゃないケータイに
出てたよね?」


「え?」

突然の話題転換。


「セイが掛けたら
トーコちゃんが出たっ、て
言ってたけど?」


「あ、…これ?」

私がポケットから
バードさんの車の中で
最初に見つけた
ケータイを取り出すと

「それ、あの娘
持たずに逃げたんだ?」

テルさんが苦笑いする。


「……」

“あの娘”って
バードさんのコト、だよね。