「シート下の食い物に
喰らいついてて

ドアが
閉められないんだよ」


やけにオトナシイな、と
思ったら

この食い意地のはった
バカ犬は

バードさんが作った
新作のお菓子に
手を出していてッ。


「ほら、向こう行け。
シッシ!」

テルさんが
遠巻きにしながら
手で追い払おうとしたって

そこを動くワケなどない。


「菓子箱を外に放り出せば
犬も出ていくだろう!」

私の肩を掴んでいた
バードさんの指に
チカラが入った。


…この犬、使えるかも!


お菓子を取り上げれば
きっとワンワン吠え出して

セイだって
気づいてくれるハズ!

そう、期待したのに。


テルさんってば

「お願いだから
噛みつかないでくれよ」

お菓子をそっと
足で車外に蹴り出して

「ワオ〜ウン!」

バカ犬が
飛び出したか否かって
きわどいタイミングで

ドアを開けたまま

車がまさかの急発進ッ!

「!!」

私とバードさんのカラダが
おおきく揺れる!


「痛ッ」

「トーコちゃん!?」