「……」
私の心臓の鼓動なのか
車のエンジンの響きなのか。
ドクンドクンと
私の不安を後押しする。
指示通り
グリーンランプで
車が左折すると
ふわ。
車体が一瞬
軽くなったと思ったら
キュキュキュキュキュ。
タイヤの甲高い摩擦音が
どんどん遠のいて
グアシャ!
ドンッ、ドゴッ!
静かな住宅街に
おおきな音が響き渡った!
「…おいおい。
後ろのワンオーの
ワゴン車のロープに
細工してやがったな」
車が左折した瞬間
ロープが緩んで
コントロールを失った
ワゴン車が壁に激突し
道が塞がれて
追い掛けてきた後続車も
立ち往生。
「崩れやすい
レンガ塀を狙うなんてさ。
さすが、元ワンオー!
この辺の建築事情にも
詳しいねえ」
テルさんが
ふざけた口調で
興奮している。
「バイクのキーを
俺に投げ落とさせる隙すら
与えずにさ。
なんて策士だ!」