レクイエム#040


私達を乗せた車が
薄暗いマンション街を
抜けると

さっきまでの静けさが
ウソのように

バスやらトラックやらの
大型車両とすれ違い出した。


窓の上方に見えるのは
高速道路だろうか。


そういえば

ワンオーの車に
ぶつかってきたのも
名古屋ナンバーの車
だったけど

この近くに
高速の入り口でも
あるのかな。


「右車線に入って」

バードさんの細かい要求に

「高速に乗って
地方へでも逃げるつもり?」

ルームミラーに映る
テルさんの目が

…笑っているッ。


それは
極度の緊張状態からくる
ニヤケなのか

それとも
セイといくつもの修羅場を
潜り抜けてきた自信からくる
余裕なのか

このヒトの場合
どちらとも
判断がつかないから
厄介だ。


すれ違う車からの
痛い視線。

「こんな目立つ車で
どこまで逃げ果せると
思ってるのか
しんねえけどさ」

なんて。

どうも
しゃべってないと
落ち着かない気質らしい。