…そうか。
そうだよね。

こう見えても
あのセイの相棒なんだから!

わざとマヌケな言動で
相手を油断させて

こちら側を一気に優勢にする
そのタイミングを
ずっと待っていたんだよね。


ああ。

そんなコトとは露知らずッ

失礼の数々を
お許しくださいッ。


心強い味方の存在に
湧き上がる期待感を
バードさんに悟られないよう

私はポーカーフェイスで
その瞬間を
固唾を呑んで待った。

のにッ!!!


「…どうも」

ってッ!

赤信号で普通に止まって

どうしてアナタはケータイを
素直に手渡しちゃってるん
でしょおかッ!!!


「……」

千載一遇のチャンス
だったのに。


まさか本気で

ここまで
使えないオトコ
だったなんて…。


私の非難の眼差しを
避けるようにして

バードさんは
ルームミラーの角度を
変える。


「あは…」

見えない未来に脱力する私に
追い打ちを掛けるように

「ふたりとも
協力に感謝するよ」

バードさんが私のカラダを
座席に押しつけ

「!!!」

シートの上に
突っ伏した私を下敷きに

車から上半身を乗り出して
窓枠に腰掛け

箱乗りした。


バードさんが
何をしようとしているのかは
謎ですが。

だけど。

もしかして、これは…。

「テルさんッ」

今が急ブレーキの
チャンスではッ!!!