なのにッ!

「何してる!
危ないぞ!!!」

バードさんの奇行に
驚いて振り返った
テルさんは

車を減速させちゃってて。


私がカラダを起こすと

「よ!」

目の前では

バードさんが手にしていた
2台のケータイを

すれ違ったトラックの
運転席に
投げ入れようとしていて!


「ダメええええええ」

「うわッ」

「…え」

あ。

「うッそおおおおおお」

私のケータイいいいいい。


私の悲鳴もむなしく
私達のケータイを乗せた
宅配便のトラックの後姿が

どんどん遠ざかっていく…。


「岐阜のナンバー
だった…ッ」

「はは。俺達、今
東海道方面に
向かってるってコトに
なってるワケだ」

なんて、笑ってますけどッ

テルさん、今のは
減速したアナタが
アシストしたのも同然です。


このデジタルバカッ!

ホンットッ、どこまでも
機転が効かないったら
ありゃしないッ!


私の私の睨みの視線を
一身に受け

「……」

テルさんのオシャベリが
ようやく止まり。


「…ごめん。トーコちゃん。

あそこの宅配便なら大丈夫。
たぶん
ちゃんと戻ってくるから」

バードさんがボールペンで

私の腕に
トラックのナンバーを
メモしながら

申し訳なさそうにした。


…悪いヒトでは
ないんだよね。