「この先にね。
テイクアウト専門の
美味しい中華屋が
あるんだけど
ニオイが強烈でね」
「……」
振り返った私の顔を見て
バードさんが
やさしく微笑んでいる。
…死を覚悟している
人間って
こんなにも
穏やかなモノなんだろうか。
アジアンビューティー。
そのヒトが
女性だとわかっても
ドキドキしてしまうのは
何故だろう。
「旨いモノは食べたいけれど
車のシートや荷物や服に
ニオイがつくのは
勘弁、ってか?
俺はわかんないね」
そこまでして
食べたい気持ち、って
運転席のテルさんが
コキコキと首を回した。
「キミも一度食べてみれば
わかるよ。
ほら
あの黄色い看板の店」
バードさんが指さす向こう
黄色い看板に黒い文字。
お世辞にも
旨そうなモノが
出てきそうにない
安っぽい構えの店に
トラックが何台も
列をなしている。
店の前の一方通行の
細い道から
また1台発進して
大通りに入っていった。