「と薬屋のじいさんが
後援していた

太極拳の道場の指導者達」


「……」

「朝の太極拳の利権争いに
敗れて
潰れちまった道場の、ね」


…私の知らないトコロで
セイがそんなコトに
首を突っ込んでいたなんて。


「俺ひとりアマチュアで
悪目立ちしてただろ?」

「そんなコトは…」

「いいんだよ。わかってる」

ルームミラーの向こう
テルさんは自嘲するように
笑っている。


「セイはそうやって
恥をかかせて

俺の忠誠心を試してる」

まったくもって
可愛い後輩だよ、って

ハンドルを右に切って
右車線に車を入れた。


「この先の信号を右に
曲がるんだよな?」

「え、あ。ああ…」

「…例の自殺マンションに
向かってるんだろ?」

バードさんのアタマの中など
お見通しだ、と
言わんばかりに

頭脳は明晰でも
状況の読めないテルさんが

余裕然と右のウィンカーを
点灯させる。


「…例の
自殺マンションって」

クボ先輩のお義兄さんの…?

「……」


そんな場所に行って
バードさんは
何をしようとしているのか。


“賽の河原”が

“報われない努力”
“徒労”の意味を持つ
コトバだなんて

無知な私に知る由もなく…。


運命を握る神様が

また私を見て笑っていた。





月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ

レクイエム#041

≪〜完〜≫


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