「いいんですかッ。

あのヒト絶対ッ
しゃべりますよッ。

そ〜ゆ〜タイプの
人間ですよッ」


「大丈夫。

彼は
ケータイを持ってないし。

この辺りは
公衆電話もないからね」


「乗ってきた車が…!」

「駐車場に
ロックされてるから

暗証番号がなければ
動かせないよ」

バードさんが
掴んでいた私の腕を
解放する。


「でもッ、テルさんは…!」

デジタルの達人で。

「暗証番号解読なんて」

きっとお手のモノ…。

「……」

口から出そうになった
コトバを

私はグッと呑み込んだ。


「一番近い駅でも
土地勘がある人間が歩いて
20分は掛かる。

タクシーを
捕まえようとしても

ワケありと怪しまれて
スルーされるのがオチ」


端正な顔立ちの
バードさんが
私を見て微笑んでいる。


「……」

エレベーターの中
ふたりっきり。

その笑顔はズルいです。