バードさんが入っていった
あの部屋に、ですか?

幽霊が出る、と?


まさか、そんな。

あははは…。


「玄関から
水が溢れ出ていたり

真夜中に部屋の窓から
明かりが漏れていたり

すすり泣く声が
聴こえてきたり…」


「クボ家の関係者が
出入りしているんだ、とか

管理人から
説明はあったけど

時間帯が時間帯だけに

気味悪いったら
ありゃしなかったわよねえ」


私を囲む輪から離れて
ウワサをする住人達の声に

私は身を固くする。


「そりゃあ、奥さん

あれは、ほら
関係者って言っても
ご主人のお妾さんだから

真昼間から堂々とは
出入りしたりできないわよ」


「それにしたって
非常識すぎだし

ひんぱんに
幽霊騒ぎは起こるのに

肝心の妾の姿を
ここ何年も見掛けたヒトは
いないんでしょ?」

お年寄り同士の会話は
声がおおきい。