自分の知り合いの
無責任なウワサ話。


耳をふせたくても

この場から
立ち去りたいと思っても

両手は
マッチョなゴマ塩アタマに
押さえつけられていて。

「あのッ!

学校とか警察の前に
ウチに電話してくださいッ」

ご婦人方に負けないくらい
おおきな声を出してみても

「息子の後追い自殺をした
母親の死体があるんじゃ
ないか、とか…」

「ああ、そのウワサ
私も聴きましたよ!」

…無責任な舌は
止まらなかった。


「あのッ!」

「こら!

おとなしくしてないと
縄で縛るぞ」

マッチョなゴマ塩アタマ

岩おこしみたいな顔の
おじいちゃんに
至近距離で凄まれて

「あはッ。えっと…?」

怖気づく私の耳に

「弟だって子を
よく見掛けるから

死体遺棄なんてのは
誰かの妄想だろうな、とは
思うんだけど」

ご婦人のひと言が
鮮烈に飛び込んでくる。


“弟”って…。


「ああ、あれは
本家の奥さんの息子でしょ」


…クボ…先輩?