レクイエム#045


「そうよ!
カッパのトーコちゃん!」


え。

「ほら、見て」

白髪のご婦人が持っていた
がまぐちバッグを

強引に私のアタマの上に
載せさせて

「間違いないわ」

お団子アタマのご婦人が
満足そうに
私の姿を見つめているッ。


「…人間に見えるけど。

カッパと言われれば
カッパのような…」

私を後ろ手にしていた
マッチョなゴマ塩アタマの

黒々とした
実直そうな太い眉ッ。


武骨な手が
私のアタマから
がまぐちバックを取り払い

「…乾いてる」

私の頭頂部の湿気を
本気で確認しているのを見て

「あら、嫌だ。

現役終えたら
新聞ひとつ
ちゃんと毎日まともに
読まなくなるとはねえ」

オトコのヒトは
これだから、と

お団子アタマのご婦人が
勝ち誇った顔をみせた。


「この間の洪水のとき

“お手柄!
カッパのトーコちゃん”って
見出しで

この子が濁流の中
人命救助したお話が

新聞におおきく
写真付きで載っていたのよ」