「ほおおお」

「あらまあ。それじゃ
とってもいい子じゃないの」

住民達が初めて
私に笑顔を向けている。


「ちょっとアナタ。

いい加減
その子から手を放して
おあげなさいな」

「あ。ああ、そうだな」


私への猜疑心と
私を取り囲んでいた
不穏な空気が和み掛けた

そのとき

「バイト先のボック☆でも
アイドル的存在だった、って
紹介されていたから

特に印象深かったのよねえ」


お団子アタマのご婦人の
ひと言に

その場にいた
みんなが反応した。


「ボック☆って、アナタ

クボさんトコのお店で
働いていたのかい?」


「え、あ、はい…?」

私の返事に

「ボック☆バーガーって
採用基準が厳しいので
有名なのに

よくこんなので
アルバイト
受かったわよねえ」

お団子アタマのご婦人が

私の腕に書かれた数字を
老眼鏡で凝視する。


「あッ、それはッ」

バードさんが
ボールペンで書いた

宅配業者のトラックの
ナンバーで。


「油性のペンで
書いちゃってるんじゃ
ないの?」

私の腕に
自分の唾をつけては

ゴシゴシと…。


ゴシゴシと…?