仲良さげに
寄り添うふたりの後ろ姿は

恋人のように
見えているに違いなくて。


背中に突き刺さる
住民達の好奇な視線を
煽るように

バードさんの手が
私の腰に回ってくる。


「…ごっくんこ」

オンナのヒト、なんだよね?


なのに
この胸の鼓動は何だろう。


ウソだらけのヒト。
謎だらけのヒト。

わかってはいるのに。


私はそのヒトに導かれるまま

クボ家の玄関の中に
足を進めていた。


「おやすみなさい」

住民達への挨拶とともに

“クボ家の坊ちゃん”と
呼ばれているそのヒトの手で

パタム。

部屋のドアが
静かに閉められる。


「バードさん、あのッ!」

戸惑う私を

「どうぞ。遠慮なく」

バードさんが
部屋の奥へと進むよう
促していた。


真っ暗な廊下の向こう

奥の部屋から
明かりが漏れている。


「…誰かいるんですか?」

ついさっきまで
留守宅だったとは思えない
暖かい部屋に

思わず、そう問い掛けて
しまっていた。


「心配しなくても
大丈夫だよ」