「住民達が落ち着いたら
出ていってくれて
かまわないから」

「…はい」

「温かい飲み物でも
淹れるよ」

リビングへどうぞ、と
言い残し

バードさんは、さっさと
部屋の奥へと消えて行く。


「あのッ、私はここで…」

「坊ちゃん。
ヒゲがないと幼く見えるな」

「……」

「似合わないふたりねえ」

廊下での住民達の話し声が
また一段と
おおきくなっていた。

「洪水のとき
なんでも下水道に
流されたらしいわよ」

「トイレのカッパちゃん?」

「アルバイトを
クビになったのは…」

「やっぱり
あの眉毛が…?」

「ハンバーガーのおおきさに
不満でも
あったんじゃないの?」


「……」

…まだまだ進化しそうな
無責任なウワサ話を

その場で聴き続けるだけの
タフなハートが
私にあるハズもなく。


「…他に靴もないし」

大丈夫だよね?


その場から逃げるように

私はバードさんの後を追い
部屋の奥へと踏み入った。