ガラス窓のついた
アンティークなドアに
手を掛けると
「…失礼します」
開かれたドアの向こう
明るい空色とグリーンが
続いていて
真っ白なソファーと
まるっこい冷蔵庫が
空に浮かぶ雲のようだ。
「適当に座ってて」
私の姿に気づいた
バードさんが手にしている
電気式の湯沸かしポットにも
可愛い羽根がついている。
…天国みたい。
なんて表現は
この場合差し控えて
おくべきなんだろう。
本棚には
美しい背表紙の洋書。
壁には鳥の形に切り抜いた
たくさんの風景写真が
【happy life】
【good morning】
手書きの
しあわせなメッセージと共に
貼り付けられていた。
「……」
誰が書いたんだろう。
ハートや音符
顔文字がまた可愛い。
あちこちに手作り感。
こんなにも愛情いっぱいの
部屋にいても
ヒトって自殺を
考えてしまうモノなのか。
なんだか凄い違和感を
覚えてしまうけど…。
「トーコちゃん」
「……」
「トーコちゃん?」
「あッ、はいッ!」