レクイエム#047


「バード…さん?」

「あ、いや。ごめん。
気にしないで」

変なコト
口走っちゃったね、と

マグカップを片手に
ひとり掛けのソファーに
腰を下ろすと

「トーコちゃんも
とりあえず落ち着いたら?」

バードさんは
私に長椅子を勧めてきた。


「……」

白いソファー。

なんだか汚しちゃいそうで
座るのを躊躇してしまう。


そんな私の指先を

バードさんの指が
絡め取るようにして

「腕に書いた番号
見事に半分消えてるね」

「……」

私の腕を取り

見上げてくる
切れ長な瞳の、黒い騎士。


長い指に、おおきな手。

オンナのヒトだと
わかっていても

やっぱり
ドキドキが止まらない。


「…なんかさ。

トーコちゃんって
似てるんだよね」


え?


「昔、田舎で飼ってた犬に」


「……」

…ええ。ええ。

そういう
いつものオチだと
わかっていましたよ。


「ワンちゃん
お好きなんですね…」

私は脱力感とともに

真っ白いソファーに
簡単に沈み込んだ。