「これでケータイと
再会できますッ!!!!」

ケータイを投げ捨てた本人に
感謝するのもナンだけど

思わず歓喜に

バードさんの手を取り
握りしめた私に

「…なんか
トーコちゃんのカラダ
ベタベタしてるね」

バードさんの冷静なひと言が
突き刺さる。


「あッッ!!!

これはですねッ!
さっきッ
このマンションの住人に
ですねッ」


「とりあえず
濡れタオル持ってくるよ」

愛犬のソソウを見るような
バードさんから注がれる
慈愛の眼差しッ。

「……」

「頬とか、髪とかも
かなりベタついている
みたいだけれど

さっき車の中にいた
あの犬の仕業かな」

バードさんが
私の服に刺さっていた
ベージュの毛を摘み取った。


「あ」

キリエさんの犬の…!


「ほおおおおお」

人間の唾液より
幾分、マシなような気がして

思わず胸を撫で下ろす。


「あはッ。そうなんです。
あの犬もすっごいバカでッ」

「そんなカンジだったね」

アハハ、と笑ってくれている
バードさんに油断して

「今朝も
逃げ出したキリエさんの犬
追い掛けて

ウチの弟達も
大変だったみたいで」

余計なひと言が
私の口をついて出た。


「キリエ…さんの犬?」

あッ!