レクイエム#048
「…油断したよ」
「バードさん?」
「まさか
僕の親のコトまで調べて
近づいていたなんて…」
私を見下ろす
深く沈んだ黒い瞳に
バードさんの本気が
伝わってくる。
それは
ボールペンを手に
私を脅していたあのときと
同じ瞳だった。
「…あのッ!
何かすっごく
誤解があるようですけれど
私は、そのッ
あのですねッ」
どこから何をどうやって
話せばいいのか。
「冷静に考えてみれば
確かにキミとの出会いは
偶然、って言うには
あまりに不自然だったよね」
いつもの道。
その日、その時間に
突然起きた交通渋滞。
「…あの渋滞も
僕に近づく為の
作為的なモノだった。
違う?」
バードさんが
感情を押し殺すようにして
私を詰問する。
「…作為的な交通渋滞?」
「そうなんだろう?」
…確かに。
あの交通渋滞を作ったのは
セイの美しさで。
セイが演武し
皆を釘付けにしたコトから
始まった渋滞だった。