「彼女にあの店へ初めて
連れていって貰ったときも
あまりの強烈なニオイに
思わずむせ返って
後ずさりする僕のベルトを
こう掴んでさ」
“人間も食べ物も
食わず嫌いしてたら
美味しい出逢いなんて
ないんだから”
バードさんが胸を反らし
アゴをあげ、腕を組んで
上から目線のオンナノコを
表現する。
“お腹の中に
温かいモノを入れてやると
しあわせな気分に
なるでしょ”
少し鼻に掛かった
独特な話し方。
「今、思い返しても
憎ったらしい
女子大生だったなあ」
バードさんがひとり
思い出し笑いを堪えていた。
「家にも帰らず
繁華街をウロついていた
中学生の後を
毎日、毎日
つきまとってきてさ」
ワンオーなんて
自警団ごっこ。
「ホンットに大学生なんて
ヒマなんだな、って」
そのお節介な言動が
マジうっとおしくて
迷惑だった、と
バードさんが
ちいさく、また苦笑する。
「そんなある日…」
彼女の姿が
パタリ、と消えた。