「この街を選んだのも

野鳥がやってくる
立派な公園が
あったから、で」


見晴らしのいい
マンションの最上階。


自殺志願者を
ひとりで住まわせるには

あまりにも不自然な環境に
思えていたけれど

そんな事情があったなんて。


「野鳥がいっぱいくる土地で
生まれ育ったから

鳥に囲まれてると
安心するんだってさ」


青い空と白い雲。

足元に広がる
緑のカーペットは

確かに
セイが生まれ育った
屋敷があったあの土地を
彷彿とさせる。


「…そう言えば」

セイも
野鳥に詳しかったな。


「“モズの早贄”で

その年の積雪量が
わかるんだ、って…」


「あ、その話

トーコちゃんも
クボくんから聴いたんだ?」


え。


「もう、鳥の話させたら
簡単には終わらないからね」


「……」


バードさんってば

私がクボ先輩のお義兄さんの
知り合いだと
勘違いしちゃってる。