このヒトは
いったい何の話を
しているのだろうか。
ううん。
クボ先輩の、クボ家の
何を知ってると
言いたいのだろうか。
「……」
「……」
私のコトを
安く見ていたんじゃないって
わかって
ちょっとホッとした反面
それでも、やっぱり
あの不器用な
クボ先輩のコトを
何か誤解しているんじゃ
ないかって
心配してしまうのは
余計なお世話なのだろうか。
「…トーコちゃんはさ。
クボくん…義兄の傷痕を
見たコトがある?」
え?
「…傷痕、って」
「リストカット」
「……」
「ううん。
切り刻まれていたのは
腕だけじゃないから
リストカットって
表現はおかしいな、うん」
バードさんが意味ありげに
自分のコトバを訂正する。
「あの…」
「……」
重苦しい空気。
なんだかヘビーな話の展開に
「…自殺しようとして
失敗した
ためらい傷の…痕ですか?」
私はどんな顔をしていいのか
わからずにうつむいた。