「デジタルって
どうも苦手でさ。

オーブンとかも
未だにメモを確認しながら
使っているくらいで」


「…よく運転免許
取れましたね」

「もし車が
矢印キー操作だったら
多分取れてなかったよ」

バードさんが苦笑しながら

キッチンから持ってきた
灰皿を
テーブルの上に置く。


「……」

出掛けなきゃ、と
腰を上げておいて

「…タバコ
今から吸うんですか?」

なんかこのヒト

やっぱり変わってる…。





「いや。形だけね」



テーブルについている

引き出しの中から

タバコを取り出して



火をつけた。


タバコの先で自己主張する

地獄の業火の如く
赤い、熱い、色。


「…この部屋を
使っているのは

あくまで
クボくんのお母さんって
コトになってるからね」


「え」

ほら、と

派手なピンクのルージュが
付いたタバコの吸い口を

バードさんが私に見せる。


「……」

…偽装、工作、ですか?


ちょっと前まで
私を大ウソつきだ、と
断罪していたのは

何処のどなたでしたっけ…。


なんだか
釈然としないモノを
カンジながら

私は静観していた。


「最近さ。

この部屋に
クボくんのお母さんや
僕以外の人間が

出入りしている
気配があってさ」


え?


「出入りしてる、って…」