ボタン、ボタン。
デジタルなモーター音の
無くなった部屋で
私は
流し台を打つ水音にさえ
ビビりまくり
「…ただのッ停電だよねッ」
フクロウの時計を
ひし、と抱きしめた。
「と、とにかく
この部屋を出よう」
停電の騒ぎで住民が
廊下に出てきているのを
期待して
私が抜け掛けた腰に
気合を入れたそのとき
パパパパパ。
電気が突然、復活する。
「あ…」
明るい部屋に
ホッと胸を撫で下ろした。
「…バードさん」
いったいどこに
消えちゃったんだろう。
アンアンアンアン。
バウバウ、バウ。
部屋のドアの方向に
顔を向ける私の耳に
犬達の吠え声が
遠く聴こえてくる。
「マンションで飼われてる
ワンちゃん達
みんなつられ鳴きしてる」
真夜中の停電なんて
寝ていたら
気づかないモノだと
思っていたけれど。
「静かにしなさい!」
飼い主らしい
シャガレた
おじいちゃんの
元気な声が響いていた。