「暖房が停まって

部屋の中から
音が無くなったら

そりゃあ犬達だって
驚いて興奮もするよね」


にぎやかな外の喧騒に
落ち着きを取り戻した私は

カチャ、リ。

そっと部屋のドアを開け

「……」

玄関へと続く廊下にも
誰もいないコトを確認する。


「…どさくさ紛れに
逃げ出すみたいだけど」

とにかくこの部屋を出て
連絡手段を確保して

セイに指示を仰ぐのが
得策だよね。


私は自分の足音を
立てないように

息を止めながら
廊下を急ごうとした。

のに。


「トーコちゃん?」

掛けられた声に
思わず足が止まってしまう。


声がする方に顔をあげると

「…何をしてるんですか?」

玄関脇きの洗面所の中で

バードさんが
布が掛かったソレを
大事そうに抱えていた。


「いや。
万が一のときを考えて、ね」


すぐに電気が復活してくれて
よかったよ、と

バードさんが
持っていたモノを

洗面所の天井に吊り下げる。


「…それ、もしかして
鳥籠ですか?」