「お前を乗せた逃亡車は
ご親切にも
ガラスの破片という
道しるべを
夜の幹線道路に
残してくれていたんだが
大量に落ちていたのも
途中まででね」
あれをまともに辿って
捜索していたら
このマンションの発見も
おそらく
朝になっていただろうな、と
セイが肩を落として
おどけて見せた。
あ。
「それでテルさんは
最初の方は
急ブレーキを掛けたりして
運転が乱暴だったのに」
宅配便のトラックのとき
「減ってきたガラスを
温存しようと
急ブレーキを踏むのを
あえて嫌がっていたんだ…」
「え?」
何か自分だけ
ちゃっかり逃げちゃったり
すんごく印象悪かったけど
「あはッ」
マヌケなフリして
「テルさんってば
しっかり計算してたんだ」
「…テルさんが何だって?」
ひとり
納得の笑みを見せる私に
セイの鋭い視線が
突き刺さる。
「あの、いえッ、あは?」
「テルさんはどうした?」
「えッ、あのッ」
「一緒じゃないのか!?」
荒れた口調で
セイが乱暴に私のカラダを
引き寄せようとしたのを見て
「…ちょっとキミ、何!?」
バードさんの腕が
それを阻んだ。