「……」

一方的に放たれる
セイの辛辣なコトバにも

バードさんは
何も言い返せずにいる。


「母親に田舎に帰ると
タンカを切って
飛び出した手前

母親の顔は見たくない。

でも、東京に残って
まともな仕事に就くにも
安全な部屋を借りるにも

保証人や
身分の提示は必要」


「……」

「そんなとき
クボの長男の母親の
甘いコトバにそそのかされ

本妻と愛人の利権争いの
道具にされるのを承知で

言われるままに
クボの跡継ぎに
成り済ました、と」

「……」


「違う?」

「……」


「駐車場に停まっていた車も
移動販売車も今の仕事も

全部、長男の母親の口利きで
手に入れたんだろ?」

「……」

セイのコトバに
バードさんが
押し黙ってしまうのも
無理は、ない。


キリエさんに関しては
誤解があったとはいえ

これじゃあ
あまりにも一方的だ。


「ちょっと、セイ。
言いすぎだよ!」

「いいから
お前は黙っていろ!」

「……」


伏せた横顔。

バードさんの口元が
一文字に結ばれ

耳まで赤くなっていた。