レクイエム#054
「バッカじゃないの…ッ!」
要らぬ挑発をして
ワンオーのおに〜さんに
首を鉄扇で殴られたのを
セイは
もう忘れてしまったのか!
こういう展開に
なるであろうコトは
誰の目にも明らかで。
「セイは
学べない人間なワケッ!?
それともマゾ…むぐぐぐぐ」
捲し立てる私の顔面を
セイの掌が押さえつけた。
「……」
この俺に
そんな口を利くなんて
お前こそ学ばない人間で
Мだろう、と言わんばかりに
セイの指が
私の顔面に食い込んでくる。
「ぐッ」
指の隙間から覗く
セイの横顔。
額には汗が滲んでいた。
いつものように
軽口を言い返す
余裕もないくらいの
強い痛み。
車の中で
セイが鉄扇で殴られたとき
ワンオーのおに〜さんは
セイがわざと挑発して
殴らせたんだ、と
主張していたけれど
さっきも、そして今も
痛みに顔を歪ませるセイの
その目には
いつもの勝ち気な光は
ない。
苦痛に歪む横顔に
注がれていた私の視線に
気づいたセイが
私のアタマを突き離した。
「…らしくないよ」
セイ。