キリエさんは
セイが小学生のとき
セイの背中の火傷の痕を
親や学校側から
隠し通す為の
貴重な協力者では
あったのかも
しれなかったけれど
それはセイが
小学校を卒業するまでの
わずか数か月間のお話で。
ねずみ〜らんどの先生
テツオさん
シンスケ
そしてテルさん。
自分へ好意を持つ他人を
利用したり振り回すコトを
美しく生まれた自分に
与えられた
当然の権利かのように
傲慢で自分本位な生き方を
してきたセイが
どうして
キリエさんに対してだけ
そこまで
恩を感じてしまって
いるのだろう。
儚い魅力の
年齢よりずっと若く見える
ワケありの未亡人。
「…私も
セイがキリエさんの為に
頑張ってるコト
ちょっとお節介が
過ぎると思うけどな」
「……」
「キリエさんには
自分の子どもを
イジメの果てに
交通事故で亡くした
経験があるから
在学中、セイの秘密を
守り通してくれた、なんて
もっともらしいウソまで
私について、さ」
「……」
私はセイを信じたい。
信じたいから
セイがキチンと
整合性を持った説明を
してくれるコトを期待した。
のに。
私のコトバに
先に反応を見せたのは
「…アハ。
僕って、イジメが原因で
交通事故死したコトに
されてたんだ?」
バードさん
一番の当事者だった。