セイの言ってるコトを
そのまま信じてしまっても
いいのだろうか。
過去にもこんな風に
怪我を負い
追い詰められたセイを
何度も見てきたけれど
今日のセイは
何かがおかしい。
胸の中に
入れっ放しにしていた
仮面。
目の前で私を
簡単に連れ去られる失態。
上手くは言えないけれど
次から次へと起こる
アクシデントに
足をすくわれ
セイが
翻弄され続けているようで。
「…ちょっと、セイ」
私はセイの左肩を
背中から
抱き寄せるようにして
「それ、信じても
大丈夫なんだよね?」
セイにそっと耳打ちした。
「……」
私の心配を
うっとおしく思ったのか
カーペットの上に注がれる
怪訝そうなセイの視線に
「だって!」
私の返す声も思わず
おおきくなってしまう。
「トーコちゃん…?」
「あ」
ただでさえバードさんは
私の度重なる
ささやかな言い逃れや
誤魔化しに
敏感になっていると
言うのに。
「…えっと、あの、ね」
私はコホン、と
咳払いして
自分の気持ちを
仕切り直した。