そんな私の配慮など
意にも介さず
「…トーコ、お前。
この部屋に入るとき
ここで躓いて
転んだだろう?」
なんて。
セイが捲れあがっていた
カーペットの端を
発見する。
「もおおッ」
ヒトが真面目に
心配しているのにッ
お前は自分の心配を
していろ、とでも
言いたいのかッ!
「あのねッ、セイ」
カーペットに貼りついている
シールゴミらしいモノを
セイが剥がしているのを
警戒しながら
私はセイに再び近づいた。
「バードさんの戸籍を見た
テルさんが
バードさんの兄弟姉妹の
記載はなかった、って
言ってたんだけど…」
小声でそっと
セイに耳打ちすると
シールゴミを弄んでいた
セイの指が止まる。
「…セイ?」
「……」
自分の指に着いた
“ソレ”を見つめ続けた後
私の顔を見て
片方の口の端をあげる
セイの目が
笑ってなくて。
“報復される!”
さまざまな経験から
そう直感した私は
反射的に
自分のオデコを守っていた。