レクイエム#055


「蹴られたのは胸元で
アタマじゃ
なかったよねッ!?」

気でも違って
しまったのかと
疑いたくなる

ワケのわからない
セイの神経回路。


「確か湿布剤
あったと思うから…!」

バードさんが立ち上がり
リビングに向かう。


「…笑ゴマしてないと
いられないくらい
痛いのなら

素直にそう言えば
いいじゃ…ッ」

ガツッ。

額に汗を滲ませながら
セイのアイアンクロウが
私の顔面を捉えた。


「おまえって、ホント
とことんトーコだな」

本日何度目かの常套句ッ。


「…どういう意味かなッ?」

「感心してるんだよ」

掴んでいた私の顔を
コミカルに
ワシワシと揺らしながらも

セイの目が笑ってない。


「…セイは
すぐそうやって
私のコト、バカにするけど

私がどれだけセイのコト
いつも心配してるか
わかってる…?」


私の顔を掴んでいた
セイの指先から
チカラが抜けて

「…Absolutely」

少しだけ笑顔のセイが
今度は私の髪を
クシャリ、と撫でた。


「……」

英語の意味は
わからなかったけど

悪口ではナイ
ような気がしたのは

セイの指が
愛おしそうに
私の頬を往復し

キスを求めて
きたからなのか…。