壁に寄り掛かるセイの襟元を
私がなかば強引に開くと
紫に腫れあがった皮膚が
露出する。
「…ワンオーに鉄扇で
殴られたトコロ…?」
思わず凍りついてしまう
私を見かねて
「トーコちゃん。代わるよ」
バードさんが
セイの肩を支えながら
カーペットの上に跪かせた。
「…そうだよね。
あんな至近距離から
鉄扇で殴られたんだもん」
いくら鍛え上げられた
筋肉でも
限度があるよね。
「我慢強いにも程がある」
セイの怪我の程度を
確認するバードさんに
「…フン。
他のヤツがやったトコより
自分が拳を入れたトコを
心配しろよ」
セイが粋がる。
「軽口が利けるくらいなら
たいしたコトはないな」
バードさんが初めて
セイに対して
余裕の態度を見せていた。
拳法家。
怪我に対する対応も
落ち着いたモノで。
「トーコちゃん。
彼が手にしている湿布
開封して」
「あ、はいッッ」
テキパキと私に指示を出す。
だけど。
アセって湿布の袋を
上手く千切れずに
「バードさんッ。
ハサミッ、どこですかッ」
顔をあげた私の視界に
入ってきたのは
「バードさ…?」
セイの上着に手を掛けたまま
固まってしまっている
バードさんの姿だった。