レクイエム#057


「バードさん。あの…?」

私に声を掛けられて

「あ」

バードさんが我に戻る。


「貸して」

私の手から
湿布の袋を受け取ると

絆創膏が目立つ指で
器用に開封した。


「……」

まるで
セイの集団リンチの現場に
いたかのような
バードさんの口ぶりに

背中が凍る。


リンチに関与していた
ワンオーのメンバーと

そのワンオーに
当時所属していたという
バードさん。


まさか、バードさんも…?


「…ごっくんこッ」


困っているヒトを見掛けたら
放っては置けない。

今日だって

寒空の下
ワンオーの故障車を押していた
見ず知らずの私とシンスケに
声を掛けてくれて。

逃亡中も、何かと
私を気遣ってくれていた。


そんなヒトが…。

本当に…?


「…なるほど、ね」

バードさんの口元に
自嘲の笑みがこぼれる。


「“視力を失った恩師の為に”

もっともらしい大義で
母に近づき、協力させ

僕を探し出すなんて

キミって
たいした食わせ者だよね」


乱暴な物言いとは真逆に

セイの首元に
湿布が丁寧に貼り付けられ

「……」

セイはおとなしく
されるがままになっていた。


…セイは
何を考えているのだろう。