バードさんを見つけて

何をしようと
していたんだろう。


俯いたままのセイの横顔を
私はそっと盗み見る。


「……」


てっきり
あの事件のコトは

クボ先輩との直接対峙で

セイの中では
消化されているんだとばかり
思い込んでいたから

正直、ショックだ。


実行犯への恨み。

今も背中に残る悪夢の残像。


「セイ…」

上着を着せ掛けようと
その肩に伸ばした私の腕を

同情を拒絶するかのように
セイの手が振り払い


「どう?

この火傷の痕を見て

思っていたより
痕が残ってなくて

ホッとした?」


その重かった口が
ようやく開かれた。


「……」

セイの挑発とも取れる
その物言いに

バードさんは目を伏せる。


「…俺さあ。

アンタがトーコを
車の中に置き去りにして
逃げ出したのは

てっきり
アンタが俺の顔を
覚えていたからだろう、って

疑いもせずに
いたんだけれど…」


加害者が被害者を
思い出しもしなかった事実を

腹立たしく思ったのか。


セイがキリリ、と顔を上げ

バードさんの横顔を
冷ややかに凝視した。