床にひれ伏したままの
バードさんの背中が
後悔に震えている。
「後で
キリエさんに聴いたよ。
ネオンの光の中
キミを
見失ってしまった、って」
「…当時は
あのヒトの目の状態を
知らなかったから」
信じてもくれない。
追い掛けて来てもくれない。
だから
「もう戻る家なんて
ナイと思ってしまった…」
静かな廊下に
すすり泣く声が低く響いた。
「…フン!
娘が家出してしまって
本人に謝罪をさせるコトが
出来ない、とか
床に額を擦りつけながら
何度も何度も俺に
アタマを下げてきて
俺も当時は
キリエさんのコト、マジ
うっとおしかったけどさ」
セイはこの空気に
苦笑しているけれど。
その勘違いを訂正する為に
セイは事件の真相を
キリエさんに打ち明け
キリエさんという
協力者を得たコトで
私達家族をはじめ
誰もセイの背中の火傷の痕に
長い間
気づけずにいたワケで。
…だけど。
セイが他人に感謝のコトバを
口にする日が来るなんて
なんだかそれだけで
全てが許され
解決の方向に向かうような
気さえしたから。
だから私も
あえて恨み言は言うまい、と
自分を落ち着けるコトが
出来たのに。
「…だけどさあ」
セイの指が
バードさんのアゴを
掴み持ち上げる。
「当時のコトと
今回、ウチのトーコが
世話になったのは
あくまで
別の件だから!」
「……」
「全て、話して貰うぜ」
月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ
レクイエム#057
≪〜完〜≫
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