レクイエム#058


獲物を目前にした獣のような
セイの強い視線が

バードさんの瞳に注がれる。


「あのねッ、セイッ。

言っておくけどッ
シンスケのケータイの
一連の騒動なら

バードさんと
カンケイないからねッ」


「……」


「バードさんは
こう見えても

立派な機械音痴でッ」


「……」

「だからッ、そのッ」


「……」
「……」
「……」


嫌な沈黙ッ。

私の額から玉のような汗が
滴り落ちてきた。


「…まあ、そう硬くなんなよ」

セイの両手が
バードさんの両肩に
載せられる。


「トーコの件、とは
言ったけど

まあ、アンタも
利用されたクチらしいし。

別にアンタを
責めるつもりはナイからさ」


セイは私を無視し

バードさんに
話し掛けていた。


「利用された、って。

…僕が?」


セイの意味深な言い回しに

バードさんの目が泳いだ。