「違うの?」

「だって、僕は…」


バードさんが
明らかに動揺している。


「クボ家の跡取り息子が

自分の母親と不仲で
交流がナイのをいいコトに

ニセの跡取り息子
つまりアンタを使ってさ

自分の息子と夫の愛人が
さも結託しているかのように
見せ掛けて

本妻にプレッシャーを
掛けているんだ、って

アンタだって薄々
気づいてはいたんだろ?」


「それは…」

バードさんが口籠もった。


長男を産んだ女性として

それ相応の立場を
与えられてきたであろう
愛人の末路。


「クボ家の跡取り息子と
仲がいい、って
アピールしておけば

周りだって
そう、ぞんざいには
扱えないだろうからね」


起死回生の大博打。


「アンタが何かをする度に

それは
クボ家の跡取り息子が

社会経験を積もうとお忍びで
やっているコトだから、と
匂わせて置けば

周りの人間達は
ウワサを耳にしても

わざわざ美談を
本人に確認するような
野暮なマネなんぞ
誰もしないだろうからな」


セイはバードさんから
視線を外すと

自分のケータイに
目をやった。