時計の表示が
丑三つ時の終わりを
迎えようとしている。


「…しっかし。

わかんないのはさ。

クボ家の跡取り息子の
成り済ましに

なんでオンナのアンタが
選ばれたのか、ってトコ」


「……」


「だって、そうだろ?

常識的に考えれば

クボ家の跡取り息子に似た
年恰好の男子の方が

バレるリスクは
少ないワケだし」


「……」


「長男との仲良しアピール
だけならさ

こんな風に何年も
成り済ます必要は
ナイんじゃないの?」


確かに。

セイの言う通り

ウソなんて
重ねれば重ねるだけ
大変になるだけだ。


「……」

そんなセイの
厳しい疑念の声にも

さっきからバードさんは
口をつぐんだまま
身動きひとつせずにいて。


「あのッ!
あのねッ、セイッ」

「…何?」


「えっと、ね。

そう怖い顔で
矢継ぎ早に
話を急かされたらッ

バードさんだってッ
アタマの整理がつかないと
思うんだよねッ」


私は堪らずバードさんを
フォローしてしまっていた。