「…ふう〜ん」

お節介な私の顔を
セイが
真正面から凝視するッ。


「怖い顔?」

「……」

「まあ、確かに。

俺に比べてお前の顔は
見ている人間を
和ませる何かがあるよな」


はい?


「お前
俺がしゃべるのに合わせて
口をパクパクしてみろ」

セイが私の首根っこを
乱暴に引き寄せると

「クス」

バードさんが顔を伏せたまま
ちいさく笑った。


「…ゴメッ。

トーコちゃんを見てると
先輩のコト
思い出しちゃってさ」


「……」

バードさんの
ワンオー時代の先輩。

クボ先輩のお義兄さんと
一緒に転落し

亡くなったという…あの。


「…言い訳するみたいだけど

ここでこんな生活を
するようになったのは

本当に、たまたま、で」

マンションの住人の勘違いが
キッカケだったんだよ、と

バードさんはひとつ
ゆっくりと深呼吸する。


「…あの夜。

あのヒトにタンカを切って
ワンオーの本部から
街に飛び出したモノの

行く宛もなく

血のついた服のまま
入れてくれる
店もホテルもなくて」


バードさんが始めた独白は

幼かったセイが受けたソレが
壮絶なリンチ事件で
あったコトを

私に想像させ

「……」

そんな私の傍で

セイは
話に茶々を入れるコトなく

黙って静かに
バードさんの声に
耳を傾けているようだった。