レクイエム#059
セイの指摘に
バードさんの眉が
戸惑いに歪んでいた。
「あの事故のコトは
いろいろ
調べさせて貰ったからね」
上半身を
折り曲げるようにして
セイの長い腕が
“ソレ”を
静かに拾い上げる。
「調べさせて貰った
って…」
バードさんはセイの発言に
華奢なカラダを強張らせた。
無理もない。
クボ家のふたりの息子が
セイの実の両親を
事故死させた加害者だと
バードさんは知らないのだ。
だけど。
「あのッ、セイは、ですねッ
えっと…ですね」
何をどう
どこからどこまで
説明すればよいのやら。
「あのですねッ
だからですねッ
そのですねッ」
「……」
「……」
「えっとですね…」
「……」
「……」
そもそも
セイの両親の
自動車事故だって
全てが明らかに
なっているワケではなく
あのとき
事故に巻き込まれ
ひとり生き残った
幼いセイの記憶と
警察で処理された内容が
かなり食い違っている。
「……」
「……」
私の次のコトバを待つ
セイとバードさん
ふたりの間に漂う
嫌な緊張感が
コトバ選びに苦慮する私に
重苦しいプレッシャーを
与えていた。
「あのさッ」
「……」
「……」
「ふたりともッ
ちょっと
笑ってみようかッ」