「あのさ。

そういう意味深なキーワード
出しておいて

黙り込むのはズルくない?」


セイが溜め息交じりに
天井を仰ぎ見る。


「…別にいいけどさ」

なんて、うそぶきながら


「アンタや義兄の作り話に
つき合う程

俺も余裕がないんでね」


それを裏付けるように

セイの首筋にリアルに汗が
川のように流れていた。


「……」

セイの
その腕の中にあるモノには

義兄弟の仲がよかったコトを
手っ取り早く証明する何かが
入っているハズなのに。

ふたりとも、どうして包みを
開けようとしないんだろう。


「…クボくんの名誉の為に
僕に語れるコトが
あるとすれば…」

バードさんは
そう前置きして

「クボくん達ってさ

その…、親から離れて
ふたりで同じ屋敷に
暮らしていたらしいんだ」

コトバを慎重に選びながら
とつとつと話し始める。


本家に
取り上げられるような形で
引き取られ、育てられた

妾腹の長男と

その事実に焦って
他所から秘密裏に
自分の産んだ子として
貰い受けてきた

本妻の息子。


24時間体制の3人の乳母と
たくさんの屋敷の使用人。

「みんな素朴で
いいヒト達でさ

愛情いっぱい
あたたかいオトナ達に
囲まれて」

オンナ達の覇権争いとは
無縁な場所で

彼らは静かに平和に
暮らしていた。