レクイエム#060
「あれって
キミのおばあさん
…だよね?」
バードさんが
確認するかのように
セイの顔を覗き込む。
「耳が遠かったのかな?
キミ、ずいぶんおおきな声で
おばあさんに
話し掛けていたよね?」
耳の遠いおばあさん…。
誰のコトを
言っているのだろうか。
「キミとおばあさんの
独特のイントネーションに
ああ、クボくんと
同じだ、って、僕は…」
調子づくバードさんを
「…まだ独身の女性に
“おばあさん”は
失礼だろうう」
セイがピシャリ、と戒めた。
「え、あ。ゴメッ。
…そうなんだ?」
焦るバードさんに
「まあ。そう見えたおかげで
クボ家所縁の人間だと
疑われるコトもなく
あっけない程、簡単に
中に入れて
貰えたんだけどさ」
セイは悪びれもせず
語ってる。
「だってさ。
マスコミやら野次馬やら
物見遊山的に
あの屋敷をヒトが囲んでて
まともに行っても
追い返されるのが
関の山、だったし」
厳重体勢の
物々しい雰囲気の中
近親者のみで
執り行われた密葬。
「アンタだって、どうせ
家の中にも入れて貰えず
その他大勢の人間とずっと
門の外で出棺を待っていた
クチ、だったんだろ?」
セイの想像が図星だったのか
「……」
バードさんが顔を曇らせた。