亡くなった
クボ先輩のお義兄さんに

たぶん

もっとも近しい人間の
ひとりであっただろうに。


焼香のひとつもあげられず

野次馬にまじって
棺を見送るしか
なかったなんて…。


「僕だって中に入る方法を
いろいろ考えたよ!

集団の弔問に
混じってやろう、とか!

だけど!、だけどさ…!」


学校の関係者。
クラスメイトとその家族。

姿を見せても
おかしくはないのに

野次馬はわんさ、といても
弔問客らしき人影はなく…。


「フリーパスで
中に入れて貰えていた
キミ達が羨ましかったよ」


肩を落とすバードさんを


「そう?

俺はアンタみたいな
クボの長男寄りの人間は

中に入らなくて
正解、と思ったけどね」


セイがクールに突き放す。


「屋敷の中は
本当に、ここで密葬が
行われているのかな、と
疑いたくなるくらいでさ」


すれ違う使用人は
皆、いつもの平服で

まるで死人など
出てはいないかのような

変わらない日常が
そこにあった。


「近親者だけ、と言いながら

肝心な父親は海外出張中。

本妻は体調不良とやらで
部屋から
出て来る様子もない」


“奥さまが
退屈してらっしゃるんじゃ
ないかしら”

使用人達の不用意な発言が
廊下の奥から聴こえてくる。


「肝心の長男の実母さえも
姿を見掛けなかったな」

セイが
バードさんをチラリ、見た。


「…遺体安置所で」

「え?」