「遺体安置所で
クボくんのカラダにある
おびただしい傷を目にして
半狂乱。
そのまま
強制入院させられた、と
言っていた…」
クボ先輩のお義兄さんの
母親から聴いた話
なのだろうか。
「あの疵を見たら
何をそんなに
苦しんでいたのか
そして転落事故なんて
ウソじゃないのか、と
疑ってしまいたくなるのも
当然だよ…」
バードさんが肩を震わせる。
「ふん。周りの人間は
みんな知っていた自傷疵を
実母だけが
知らなかったなんて
滑稽なお話だな」
腕を組み、目を閉じたまま
口の端をあげるセイの腕を
掴み
「…セイ!」
私が窘めると
「まあ、あの家は
みんなアタマが
おかしいみたいだから
仕方ない、って言えば
仕方ないか」
セイがまた開き直った。
「棺だってさ
場違いな
華やかなホールに
置かれててさあ」
「……」
「……」
「ベルサイユ宮殿に
白と黒の鯨幕だぜ?
もはやウケ狙いとしか
思えないよな?」
棺の傍のテーブルには
アフタヌーンティーセット。
「あのチーズケーキ
美味そうだったなあ」