「メリー、さん!?」
「……」
セイは私の質問に
肯定も否定も
しなかったけれど
「美味しい朝定食を
出してくれるあの店の…」
セイの同郷人。
たぶん
アタリ、なんだろう。
「…彼女もさ
俺同様、転落事故の記事で
クボの義兄弟がこっちに
上京していたコトを
知ったから」
特権階級の中で
何不自由なく
勝ち組みとして
暮らしていたのでは
なかったのか?
赤ん坊の引き取りの
仲介をした自分への
後悔と自責の念。
「彼女、義弟の後ろで
突然、大声で泣き出して」
“祖母と孫”設定を
すっかり忘れ
「自分は誰なのかを
義弟に話しちゃうしさ」
メリーさんのちいさな背中に
寄り添う
幼いセイの戸惑う姿が
目に浮かぶ。
「俺、たまたま駅で
クボ家までの道を
駅員に尋ねていた彼女に
声を掛けただけで
そんな事情なんて
知らなかったからさ。
ここでそんな話
聴かされても、って
メチャ焦ったね」
「…だから、クボ先輩は」
メリーさんを
知っていたんだ。