差し出した手も
思わず引っ込めんでしまう。
なのに
「…セイ…?」
ふと見上げたセイの横顔は
意外な程、冷静で
眉ひとつ寄せてなかった。
…このギャップは
何なのだろう。
「だってそうじゃない?
あのとき
ワンオーの車の中にいた
小学生の俺が
血だらけだった、とか
グッタリしていた、のなら
まだしも
ワンオーの車に同乗していた
と言うだけで
どうして“ヤバい”なんて
思えたのかねえ?」
セイは上半身を折り曲げて
バードさんの顔の真正面に
自分の顔を近づけると
「あのとき、俺
車の中で笑ってたよね?」
ニカリ、と
オーバーに笑顔を作った。
「だってさ。
クボの坊ちゃんが
全てを懺悔し謝罪したいから
俺を探してる、って
言われてさ
俺、ワンオーの車に
乗ったんだもん」
…あの慎重で
疑り深い子どもだったセイが
警戒もせずに
ひとりで知らない車に
乗り込むなんて
確かに不自然だと
思ってはいたけれど
そういう理由が
あったなんて。