「あのとき
俺を車で迎えに来た
ワンオーのメンバーって
ホント、善良な
その辺の気のいい
兄ちゃん姉ちゃん、でさ」
“車、揺れてるけど
大丈夫?”
“キャンディの食べ過ぎは
いきゃんでえ”
…その和やかな空間が
セイを油断させ
直感を鈍らせたのか。
「ワンオーの本部の前で
俺を車から
降ろすときなんか
もう傑作でさ」
“冷え込んできたから”
「銀行の名前が入った
ダッサいタオルを
俺の首に有無を言わせず
巻いてくれちゃったりして
カッコ悪いったら
ありゃしない」
“いっぱいあるから
遠慮するな”
“風邪引くんじゃないぞ”
「俺をひとりその場に残して
自分達はそのまま
寒風吹く夕暮れの街に
パトロールに出て行ったから
たぶんヤツらは
俺を連れてくるように
指示されていただけで…」
その後のコトは
何も知らされて
なかったんだろうな、と
セイが当時の様子を
客観的に分析した。