玄関ドアから
冷ややかな空気が
流れてくる。
…このマンション古いから
きっとこんなやりとり
ひとつひとつが
筒抜けに
なっているんだろうな。
ふと、さっき会った
マンションの住人達の顔が
アタマに浮かんだ。
「……」
「……」
「……」
セイは
何を考えているのだろう。
恫喝なんかして
ほら、また空気が固まった。
「…あそこでさ
失敗を犯したり
ワンオーの秘密を
外部に告発しようとした
メンバーが
責任を追及され
その挙句
どんなコトを
強いられていたのか」
「……」
「…答えたくなければ
それでもいいさ」
…そうやって
声のトーンを落としても
コトバをひとつひとつ
ハッキリと発音する
嫌味な、そのしゃべり方が
バードさんに
さらなるプレッシャーを
与えているって事実に
セイは気づいては
いないのだろうか。
セイにはバードさんから
何か聴き出したいコトが
あるのだ、と
私は勝手に
思い込んでいたけれど
むしろ、さっきから
手持ちの情報を
披露しているのは
セイの方で。
「…らしくないよ、セイ」
「フン!」
セイの憤懣がまた
静かな廊下に
おおきく響いていた。