セイのこの投げやりな態度に
不安を感じるな、と言う方が

無理な話で。


「…あのねッ、セイ。

もう夜更けで
みんな寝てる時間だしッ

もう少し小声で
穏やかに…うぐッぐ!」


注意を促そうとした
私のアゴに

セイが
長い指が食い込ませるッ!


「ぶおうりょぐ
ぶあんたいッッ!!!」

抗おうとする私に

セイのキツイ眼差しが
突き刺さりッ

「ぶぐッ…」


セイのお口チャックの
ジェスチャーの下

私は堪らず
自分の主張を引っ込めた。


「…あの部屋って
マジ、クレージーだった
よなあ?」

セイが嫌味な程
滑舌の良いおおきな声で

ひとりでしゃべってる。


「ブルーのペンキが
床や壁、いたるトコロに
飛び散っていてさ」


「…ブルーの」

ペンキ?


「そ。
真っさお、さおのブルー」

セイがふざけるようにして

私を玄関の方へと
押し出した。


「床なんてさ

乾いたペンキに
髪の毛が束で
こびりついたまま
固まっていて

気色悪いったら
ありゃしない」


その部屋で
何が行われていたのかは

一目瞭然。


「全裸でのペンキ被りや
べん髪の強要、と

ずいぶん過激に
やってたみたいじゃん?」


これは懲罰ではなく

あくまでも
“本人の意思”によるモノ。


“我々は
反省を促しただけで”


“本人が責任を感じて
ペンキを被っただけです”


“勝手に自分で
髪を剃り落としました”


「自分の恥かしい姿を
これ以上
外に晒したくはナイ、と

被害者はもう
泣き寝入りするしか
ないだろうね」